
ヨーロッパでは夏にはいると、一気に気温が上昇し、屋外での活動が盛んになる時期です。なかでも野外コンサートは、大自然と一体になって楽しめる祭典として、音楽ファンから根強い支持を得ています。
しかし、数日にわたる真夏のコンサートでは、宿泊に頭を悩ませる観客も多く、付近のホテルは満室で泊まれないという経験をした人も多いのではないでしょうか。
そんな中、会場に近く、料金も手ごろな宿泊施設「CAN SLEEP(巨大缶ビールの簡易宿泊所)」がデンマークに登場し大きな話題を呼んでいます。
デンマーク最大のミュージック・フェスティバル
デンマーク・スカナボーに本拠を置くスカナボー・フェスティバル・クラブは、ライブミュージックや演劇、野外フェスティバルなど非営利団体が主催するイベントです。その中でも1980年に開始した夏のミュージックフェスティバル「Danmarks Smukkeste Festival」(「デンマークでいちばん華麗なフェスティバル」という意味)は、国内外のロックやポップミュージックファンに大人気の恒例コンサートです。
今年のスカナボー・フェスティバル・クラブのラインナップでは、”SKRILLEX”や”50セント”、”バスティル”などの大物アーティストが登場し、会場を沸かせました。
そして、もう一つ、大きな話題を呼んだのが、宿泊施設の「CAN SLEEP(巨大缶ビールの簡易宿泊所)」です。
ビール缶をモチーフにしたおもしろい宿泊施設
このフェスティバルでは、コンサートチケット購入客に宿泊施設も提供しています。他のコンサート会場にはない特別なサービスをしたいと、2005年8月に「CAN SLEEP宿泊施設」を導入しました。
CAN SLEEPの考案者は、ヨナス・ハルベルク(Jonas Hallberg)氏とスティグ・アンダーソン(Stig Anderson)氏。2人は、フェスティバルのイベントマネージャーで、観客への宿泊提供が改善できないものかと友人達と缶ビールを飲みながら議論中に、ビールの缶をモチーフにすることを思いついたと述べています。
コンサート会場付近には、設備が整ったキャンプ場はありますが、テント同士は隣接しており、視覚は遮断できても音は筒抜け。さらに、コンサート期間中、宿泊料がつり上がるホテルの利用は、観客たちにとって痛い出費となります。
宿泊に頭を痛める客が多いことを知っていたハルベルク氏とアンダーソン氏は、「コンサートを楽しむ」という本来の目的を損なわずに観客が自由なスタイルで宿泊施設が利用できればと、「CAN SLEEP」の導入を決めました。
プライベート空間を確保できる宿泊所、さらに、タイアップによる宣伝効果も
デンマーク第2の都市オーフスに本社がある「Royal Unibrewビール醸造所」と、「CAN SLEEP」による5年間の国内独占広告タイアップを企画しました。
素材は、延べ金で1缶の価格は4000ドルほどで、今までに121個のCAN SLEEPを制作しました。宿泊用として114個のCAN SLEEPを使用し、残りの7缶はプロモーショシやレセプション向け、売店として使用しています。
毎年8月の第2週末に開催されるこのフェスティバルには、3万5000人の観客と8500人のフェスティバル関係者が集まります。CAN SLEEPは、年に1回使用されるだけですが、観客に与える広告のインパクトは相当強いものと考えられます。
現に、初登場の2005年は、Webサイト申し込み開始後40秒で売り切れとなり、2007年からハガキでの応募制では、1万1000人が申し込んだと言われています。観客の口コミで人気を博し、年々宿泊希望者が増え続け、供給が追いつかない状態が続いています。
「CAN SLEEP」の内装
缶の直径は2.2メートル、高さは3.75メートル。1階リビングの天井の高さは2.1メートル。2階ベッドロフトの高さは1.4メートル。ベッドフロアは、全床に厚さ70ミリの円形マットレスが取り付けられており。窓は2つ付いてます。1つの缶に宿泊できるのは2人までで、トイレとシャワーは共同使用場を利用します。
宿泊予約は、コンサート開始の前日から終了の翌日までとし、コンサートが開催中の6泊で1缶2900デンマーククローネ(約6万900円)となっています。
今年のフェスティバルは終わってしまいましたが、野外コンサート好きの人は来年、デンマーク最大のフェスティバル『スカナボー・ミュージック・フェスティバル』で巨大缶ビールに宿泊してみてはいかがでしょうか?
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