まるで映画のような冒険物語、サハラ砂漠で故障した車をバイクに改造して危機を脱出した男

By | 2015/02/22
シトロエン2CV


エミル・ルレイ

最寄りの村まで数十キロ、手元にはわずかな水と食料しかない。助けを呼ぶ通信手段もない。

「もしも、たった一人で砂漠を車で旅行していた時に、車が動かなくなってしまったらアナタならどうする?」

この映画にでもできそうな出来事が1993年のサハラ砂漠で実際に起こった。これはフランス人のエミル・ルレイ(Emile Leray)がモロッコ南部の都市、タン・タンを出発しサハラ砂漠を縦断しようとした時の冒険物語だ。

当時はモロッコは内戦で軍事的な緊張が高まっており、サハラ砂漠を縦断中のエミル・ルレイに「フランス国家憲兵隊」からタン・タンに引き返すよう指示があった。

しかし、彼は軍の指示を聞き入れなかった。正規のルートを大きく迂回して、旅を続けたのだ。当然安全なルートではなく、砂に埋もれた未舗装の道なき道を行くことになる。

シトロエン2CV

その時に彼が載っていた車は「シトロエン2CV」というクラシックタイプの車両。もしもオフロードに適した車であれば、今回の冒険物語は生まれなかったかもしれない。そもそも車で砂漠を縦断すること自体が無謀であるが…。

(2CVは、フランスのシトロエンが1948年に発表した、前輪駆動方式の乗用車。きわめて独創的かつ合理的な設計の小型大衆車で、自動車の歴史に残る名車の一台と言われている。)

悪路を無理やり進んでいくうちに、シトロエン2CVはついに走行不能となってしまった。

エミル・ルレイがその時にとった行動は車を分解しバイクにすること

幸い10日分の水と食料を携えていたので、3日でバイク完成させることを目指した。車のホイールアームを逆さまにしてシャーシを取り付け、ギアボックスとエンジンをその上にのせた。そしてバーをハンドル代わりにし、ガスタンクとバッテリーをうまく搭載させ完成したのである。

結局12日間も費やすことになったが、基本的な工具しか持ち合わせていなかったことを考えれば完成したことさえ奇跡に近い。シトロエン2CVの構造がシンプルであったことも、バイク作りの助けになった。

食料は底をつき水が500ミリリットルになったギリギリのところで、彼はなんとか砂漠を脱出。見事に最寄りの村落に到達したのである。

車を分解しバイクにすること

クラシックタイプの車両

技術と経験はもちろん、強い精神力がなければエミル・ルレイはサハラ砂漠の真ん中で力尽きていただろう。また、シトロエン2CVというシンプルな車だったからこそバイクを組み上げることができた。彼の砂漠縦断は叶わなかったが、見るものに勇気や生命力を与える冒険物語が生まれたのだ。

Via:ODDITYCENTRAL