世界中の壁に埋め込まれた1200個ものUSBメモリー。誰が何のために?

By | 2015/02/28
世界中の壁に埋め込まれたUSBメモリー


世界中の壁に埋め込まれたUSBメモリー
壁にUSBメモリーを埋め込み、まるでスパイの情報受け渡しのような場所が世界中にあるのをみなさんご存知だろうか?

これはドイツ・ベルリン出身のアーティスト、アラム・バートル (Aram Bartholl) 氏の「Dead Drops(デッドドロップ)」という作品で、直接会わない人同士がデータを交換できるようにするという2010年から行われているアートプロジェクトだ。

このプロジェクトは、ファイル共有の「脱クラウド化」を目的としており、最初はニューヨーク市周辺の建物の壁5カ所のみだったが、現在は世界中の約1200カ所にまで拡大している。

ちなみにUSBが設置されているニューヨーク市周辺の建物は以下の5カ所。

・87 3rd Avenue, Brooklyn, NY (Makerbot)
・Empire Fulton Ferry Park, Brooklyn, NY (Dumbo)
・235 Bowery, NY (New Museum)
・Union Square, NY (Subway Station 14th St)
・West 21st Street, NY (Eyebeam)

こちらは、現在USBが設置されている1200カ所が分かる世界地図。米国や欧州を中心に設置されている。

Dead Drops

USBポート付きのパソコンを持っていれば誰でも自由に接続し、ファイルのアップロードやダウンロードを匿名で行うことができる。現在は色々なファイルがこのUSBに保存され、データ交換が行われており、さらに専用のiPhoneアプリも用意されている。

また、一つ一つのUSBには、このプロジェクトを説明する「readme」ファイルだけが入っており、USBを発見した人は思い思いのファイルを入れている。

街中の壁からキョトンとUSBのコネクト部分だけ出ているのがなんとも不思議な光景だが、壁に空けた穴にUSBメモリーを入れてセメントで固め、コネクタの部分だけが突き出た状態にするというシンプルな構造だ。

Dead Dropsを制作したアラム・バートル氏は「Dead Dropsは、公共の空間に設置した、匿名でオフラインのピアツーピア型ファイル共有ネットワークである」と述べている。今の時代とは逆を行くような考え方で、ファイル共有をインターネットから切り離すということだ。

初期のDead Dropsは、アーティストの曲や自らの楽曲を共有するという形の参加が多かった。しかしその後は、映画、ゲーム、漫画、テレビ番組など、共有物の範囲が広がり、詩、家族の動画や写真、芸術プロジェクトを共有する人もいるそうだ。

また、セキュリティについての質問がDead Drops公式サイトのFAQのトピックスにあるが、それについてアラム・バートル氏は下記のように述べている。

『特に対策はしていません。Dead Dropsは公共の場に設置されていて、公有のものです。それがDead Dropsのコンセプトでもあるし、ゲームともいえるでしょう。ふつうみなさんは自分のコンピューターのセキュリティに関して自分で責任をもっていますよね。まさかインターネットという場所が安全なところだとは思っていないでしょう!だからもしUSBにウイルスや不正なソフトウェアが入っていればセキュリティシステムがそれを知らせてくれるはずです。その点については注意しておいてください。自分でコンピュータシステムを守るのです。』

Dead Drops アラム・バートル (Aram Bartholl)

Dead Dropsの発想は、スパイ同士が直接会わずに秘密の場所で物品を受け渡すための方法に由来する。「dead drop」という言葉はもともと、そのような秘密の受け渡し場所のことを指すようだ。

場所を知っている人間、たまたま見つけた人間の間でのみがファイルの共有が可能。そして、まるで建物全体をディスクドライブのようにしてしまう面白い発想のアートプロジェクト「Dead Drops(デッドドロップ)」。壁の他にも、駐車場のアスファルト、橋の土台部、森の奥深くに設置されたUSBがある。中にあるデータも、年々独創性を発揮するようになってきている。見かけた方はぜひ中身を覗いてみてはいかがだろうか。

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Aram Bartholl | Dead Drops