
上の写真は、黒人少年が白人警官に射殺され、警官が不起訴となった事件、通称「ファーガソン事件」を巡る抗議デモ中に撮影された一枚の写真。今、この写真がSNSで20万以上シェアされ、全米のみならず、全世界で大きな反響を呼んでいます。
「ファーガソン事件」の詳細
ファーガソン事件というのは、アメリカ中西部のミズーリ州セントルイス郡ファーガソンで8月9日に、コンビニエンスストアから帰宅する途中だった黒人少年マイケル・ブラウン(18)が、白人の警察官ダレン・ウィルソン(28)と言い合いになり、警察官が武器を持たないブラウン少年を射殺したという事件。
警察は記者会見で、警官がブラウン少年にパトカーに押し込められ、暴行を受け、拳銃を奪われそうになったと説明。その際、車内で拳銃1発が発射されました。2人が車外に出た後も、ブラウン少年は複数回撃たれ、現場で死亡。
同夜、ブラウン少年の死に抗議する人々が車の窓を壊したり、近くの店を略奪するなど大きな暴動が発生しました。
FBIがブラウンさんの死について、人権侵害があったかどうかを中心に調査を開始。その間、警察署に対する脅迫があったことを理由に、ブラウン少年を射殺した警官の名前を公表するのを取り下げたため、二夜にわたり警官隊とデモ隊との衝突が起きました。
暴徒が警官隊に火炎ビンなどを投げ、警官隊は発煙弾や催涙ガスで応戦。この時、警察が装甲車を出動させ群衆にライフルを向けている画像が、SNSを中心に広く共有されました。
事件から1週間後、ファーガソン警察は、ブラウン少年を射殺した警官が”ダレン・ウィルソン”であることを明らかにしました。また、ブラウン少年が事件の直前にコンビニエンスストアで強盗を働いていた容疑があるとし、強盗の場面を映した防犯ビデオも公表。
しかし、数時間後に行われたジャクソン署長の記者会見で、ウィルソン氏がブラウン少年を呼び止めたときには強盗の件は知らなかったと述べ、デモ隊の怒りを買い、夜になって警官と群衆が再び衝突。ミズーリ州のニクソン知事は、ファーガソンに非常事態を宣言するとともに、夜間外出禁止令を出しました。
ブラウン少年の家族の要望でニューヨーク市の元検視局長が再び行った検視では、少なくとも6発が命中し、うち2発は頭に当たっていたことが判明。ブラウン少年の母親は、警官のウィルソン氏を逮捕するよう求めました。
事件から約10日後、ニクソン知事は、最も平和的にデモを行っている人たちの姿勢は称賛されるべきだと述べ、比較的少数の犯罪者が夜の抗議活動に紛れ込まないよう、今後はデモを日中に制限するよう協力を呼びかけました。
しかし、11月24日に行われたセントルイス郡の大陪審は、射殺したウィルソン氏が不起訴処分と下したことにより、不服とした数百人のデモ隊が再び暴徒化。
黒人に対する警察の取り締まり手法をめぐる抗議デモが現在も全米規模に広がっています。
混乱の中、全米の心打った1つの出来事が…
写真の男の子は、ファーガソン事件のデモ抗議に『フリーハグ』と書かれたプレートを持って参加していたデボンテ・ハート少年(12)。目に涙をためて立っていたハート少年に、警備についていたブレット・バーナム警官が、『なぜ泣いているの?』と問いかけました。
幼い頃に実の親から虐待を受け、心に深い傷を負っていたハート少年は、自分も黒人であることから、いつか今回の事件のような恐怖・差別に出遭うのではないかと怯えて泣いていたことを話しました。
それを知ったバーナム警官はハート少年に対し、こう尋ねました。
『私もハグしてもらえるかい?』
愛情を持ってデモに参加したハート少年とバーナム警官の『フリーハグ』は世界中でシェアされ、多くの人々が心打たれました。
反響を受けインタビューに応えたバーナム警官は「こういう関わりが普段私たち警察官がやっていること、私達は善意を生むためにこの仕事をやっている事をわかって欲しい」と答えました。